睡眠障害
睡眠障害とはどんな病気?
睡眠障害とは、簡単に言いますと「睡眠に何らかの問題がある状態」です。 「眠れない」だけでなく、寝付けない、途中で目が覚めたりする、睡眠中に起き上がって徘徊するなども睡眠障害に含まれます。睡眠不足の結果、日中眠気に襲われたり、身体がだるい、集中力が続かないなど、心と身体にさまざまな影響を及ぼします。このような身体的症状が現れると、イライラしたり気持ちが落ち込んだりして精神的な症状も現れやすくなります。
一般成人のうち約10%が慢性的な不眠症で悩んでおり、そしてたまに不眠を感じる方は、約30〜50%にまで上ります。背景には、ライフスタイルの多様化、24時間社会における生活リズムの乱れ、ストレスなどがあるのかもしれません。 睡眠の何が問題なのか、その原因は何か、主観的症状と客観的情報を多面的に検討・整理することが、適切な診断と治療につながります。専門医の指導のもと適切な治療を行えば、症状の改善が見込まれます。
睡眠障害の原因は?
睡眠障害の原因は様々なものがあります。ストレスがよく原因と考えがちですが、ほかに「薬による副作用」「アルコールやカフェイン、タバコなどの嗜好品(しこうひん)」も考えられます。
ストレス
極度のストレスや緊張は、睡眠を妨げてしまいます。特に神経質で真面目な性格な方は、精神的な疲労によって不眠になりやすい傾向があります。また、精神的な問題が生じている場合もあります。単に不眠症と思っていたところ、実はうつ傾向・うつ病になっていたというケースも少なくありません。多くの心の病は不眠を伴いますので、様々な方面から治療が必要となります。また、ライフスタイルの変化により体内リズムが乱れてしまい、眠れなくなることもあります。現代社会において昼と夜の行動範囲の区別が薄れてきている状態だと、体内リズムが狂いがちになり、睡眠も乱れてきます。夜勤やシフト勤務などがあって、就寝期間が不規則なことも原因になりやすいです。
薬の副作用
今飲んでいるお薬が、眠れなくなる副作用があるかもしれません。原因が薬の場合、服用を中止することで改善します。ただ、定期的に服用しているお薬の場合、急に服用を中止することは難しいです。診察時に相談することで、お薬の処方を変更することもあります。
コーヒーやタバコなどの嗜好品
コーヒーなどに含まれるカフェイン、タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり、睡眠を妨げてしまいます。まずは夜の嗜好品の摂取を控えるようにしましょう。また、タバコの場合は吸い続けることによって慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病気になる可能性があります。気道の炎症によって狭くなると呼吸しづらくなるため、結果的に睡眠障害を引き起こします。
睡眠障害とアルコールの関係について
「眠れないからお酒を飲んで寝よう」としている方がいると思いますが、これは絶対にやってはいけません。アルコールを摂取は、中枢神経抑制作用があり脳の活動を低下させる作用があります。つまり酔っている状態です。アルコールが体内に入っている状態だと寝つきは良いのですが、眠りが浅くなるため、十分な睡眠をとることができません。結果として睡眠障害を引き起こしてしまいます。
日本人の場合、眠れない時によくお酒を飲んでから寝ようとしている方は少なくないです。眠れない時、睡眠薬よりもアルコールで対処する頻度が高く、それが原因でアルコール依存症や二次性うつ病を発症することもあります。しかし、日本人は睡眠薬に対する抵抗があり、危険な薬と皆している方が多いと思います。しかし、お酒に依存するよりも病院でしっかりと治療することが良いのです。
毎日お酒を飲んで不眠を対処するのは良くありません。睡眠障害の場合は、お酒に頼らず必ず専門医の診察を受けてしっかりと治療しましょう。
睡眠障害の主な症状
睡眠障害のサインや症状は大きく分けて、
1)不眠、2)日中の過剰な眠気、3)睡眠中に起こる異常行動や異常知覚・異常運動、4)睡眠・覚醒リズムの問題、の4つにまとめられます。
具体的な例としては、下記症状が挙げられます。
- 布団に入ってから眠るまでにいつも時間がかかる
- 寝付いたと思ったら、夜中に何度も目が覚めてしまう
- 目覚ましよりも早く目が覚め、それ以上眠れなくなることが多い
- 熟睡感がない、寝た気がしない
- いびきが気になる
- 日中に眠くなる事が多々ある
当院での睡眠障害の治療方法
1まずは原因とタイプを把握する
睡眠障害の治療は原因と重症度によって異なります。軽度の不眠の場合、まずは「行動の変化」もっと言うと「ライフスタイルの改善」を行います。できるだけ規則正しい睡眠習慣を実施することが大事になります。そして、必要に応じて処方の睡眠薬等を使用していきます。睡眠障害のタイプによって処方の睡眠薬が変わります。
また、睡眠障害はうつ病や不安障害などの他の病気が原因で起こっている場合も多々あります。
当院では、患者様の話をしっかりと聞いて、睡眠障害の原因とそのタイプをしっかりと見極めることに努めています。診察時にどのような感じで眠れないのか自覚症状を言っていただくと診断がスムーズになります。
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不眠
●入眠障害:なかなか寝付けない
●中途覚醒:途中で目覚めてしまう。そのあとまた寝付けない。
●早朝覚醒:熟睡できず、朝早く起きてしまう。Q. こんな症状があるときは?
A. 「精神疾患・身体的な疾患」「現在飲んでいるお薬」の他に、下記の睡眠障害もチェックします。そのうえで不眠症かどうか総合的に判断します。 -
過眠
●日中眠い
●よく居眠りをすることがあるQ. こんな症状があるときは?
A. 睡眠不足や睡眠の質が低下する病気がないかチェックします。しっかり睡眠をとっているのに、日中眠たい場合は「過眠症の疑い」が考えられます。 -
就寝時の異常感覚
●脚がむずむずする
●ほてったりする
●脚をじっとさせていられない
そのため、よく眠れない。いつも夕方以降に脚がむずむずする。Q. こんな症状があるときは?
A. 「むずむず脚症候群」の可能性が考えられます。むずむず症候群は別名「レストレスレッグス症候群」とも呼ばれ、この病気の場合、生活習慣の改善以外に専用の治療を行います。詳しくは、「むずむず脚症候群」のページをご参照ください。 -
睡眠・覚醒リズムの問題
●適切な時刻に入眠できない
●希望する時刻に起床することができないQ. こんな症状があるときは?
A. 睡眠日誌で睡眠・覚醒リズムをチェックします。サーカディアンリズムによる睡眠障害の可能性が考えられます。 -
いびき・無呼吸
●いびきがうるさい
●眠っているときに息が止まる
●突然息が詰まったようにいびきが途切れるQ. こんな症状があるときは?
A. 体重・飲酒・今飲んでいるお薬をチェックします。上記に該当する場合「睡眠時無呼吸症候群」の疑いが考えられます。 -
睡眠中の異常行動
●寝ぼけている行動をとることがある
●寝言を言う
●睡眠中に大声を出したり叫び声をあげたりするQ. こんな症状があるときは?
A. 夢との関連性を考えたり、睡眠中に起こして覚醒するかチェックします。病気の場合、「睡眠時随伴症」という病気の疑いがあるかもしれません。 -
睡眠中の異常運動
●寝入る時・夜間に脚がピクピクと動いているQ. こんな症状があるときは?
A. 就床時の異常感覚についてチェックします。「周期性四肢運動障害」の可能性が考えられます。
2薬物療法
また、睡眠薬は最初にしっかりと飲んでいただき、症状が良くなった段階で依存することなくしっかりと減薬していくことが大切です。
当院では患者様の症状をもとに、薬物の治療が必要であると判断した場合にのみ、薬物治療を提案させていただいております(当院ではモディオダールの処方はしておりません)。
不眠症の治療は睡眠薬を用いた薬物療法が一般的とされておりますが、睡眠薬を一度使い始めると手放せなくなり、次第に量が増えていくといった危ないイメージを持っている方たちがいらっしゃるというのも事実であり、当院もそのご心配はしっかりと受け止めないといけないと考えております。
もちろん、従来に用いられていた睡眠薬は効果が強力な反面、安全性に問題があるものもありましたが、一方で近年の睡眠薬はそのような依存性の高い薬はなくなり、現在広く使われている睡眠薬は自然に近い眠りが得られ、安心して服用することができるようになっております。
ご来院いただいた後の注意点
治療において睡眠薬はあくまでサブ的な役割を果たすものであり、正しい生活リズムを作る事がもっとも大切です。背景にある身体的な病気やうつ病などの精神疾患に注意ながら、まずは睡眠衛生の6つのアドバイスを行います。
1規則正しい睡眠時間
まずは規則正しい睡眠時間を取りましょう。と言いましても、睡眠時間には個人差があります。
また、毎晩同じ時間に寝床につくようにしましょう。そうすることで、身体が今から寝るという習慣がつくため、自然な睡眠になっていきます。
そして、起床時間も毎朝固定にしましょう。起きる時間がバラバラになると、眠たくなる時間もずれてしまいます。また、ベッドの上で過ごす時間はなるべく短くなるようにしましょう。起きたらベッドでゴロゴロするのではなく、スッと起き上がり離れましょう。
2睡眠の5時間より前に毎日運動をする
適度な運動は睡眠に良い神経伝達物質を放出するため良い睡眠につながります。しかし、5時間以内に運動すると脳や心臓が刺激されるため、目が冴える報告があります。
運動を習慣づけられる時間に固定して行うのが良いでしょう。1日の空いた時間に、軽いジョギングでもいいので身体を動かすことが重要です。少しでも運動の時間をつくるよう心がけましょう。
3リラックス
自分にとって一番良いリラックスできる方法を探しましょう。ストレスや心配事は睡眠障害を引き起こす元です。お風呂の湯船に浸かったり、読書してみましょう。軽い運動もおすすめです。ただし、運動は先述にも記載した通り5時間より前に済ませておきましょう。
4寝る前にスマホなどを使用しない
寝る前に刺激となるような光は避けましょう。テレビやパソコン、タブレット端末も同様です。寝床につく1時間になったら、見ないようにしましょう。
5空腹の場合は軽食を取ろう
お腹が空いているとなかなか寝付けなく入眠を妨げる原因になります。逆流性食道炎の方以外は、軽食をとっても良いでしょう。ただし、寝床につく数時間前までに食べておくようにしましょう。消化されやすいものや温かいものは良いです。
6寝る前にお酒を飲まない
先述にも記載した通り、寝る前のお酒は睡眠の質を下げます。お酒を飲む時間や量を考えて飲みましょう。お酒は軽いストレスの発散にもなるので、禁酒までする必要はありません。
また、睡眠薬を飲んでいる方は、お酒との相性は良くありません。晩酌後に睡眠導入剤を服用したところ、ふらつきや物忘れだけでなく、おかしな行動をとってしまうなどの副作用が現れやすくなります。
そのため、寝るための飲酒はやめましょう。
睡眠障害チェックリスト
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眠るのに30分以上かかり、以前より寝付きが悪くなったはい ・ いいえ
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夜中に何度も目が覚めるようになったはい ・ いいえ
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目が覚めるのが早くなり、その後寝ようと思っても眠れないはい ・ いいえ
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睡眠時間は十分だが、起きても寝た気がしないはい ・ いいえ
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睡眠不足によって気分が落ち込んだり、イライラしたりするはい ・ いいえ
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日中の活動力が低下したり、ぼーっとすることが多くなったはい ・ いいえ
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日中の眠気がすごいはい ・ いいえ
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日中に疲れやすく、睡眠をとっても疲れが残るはい ・ いいえ
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頭痛や肩こりなどの症状がひどくなったはい ・ いいえ
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眠れないことに対して不安が強いはい ・ いいえ
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仕事で夜勤をしていて、夜勤後は特に眠れないはい ・ いいえ
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朝方になるまで眠くならず、寝たら昼頃まで起きないはい ・ いいえ
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昼夜のリズムがつかず、寝る時間が不規則であるはい ・ いいえ
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寝る時間と起きる時間が、毎日平均1時間以上ずれるはい ・ いいえ
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日中に強烈な眠気に襲われ、そのまま寝てしまうはい ・ いいえ
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金縛りによくあうはい ・ いいえ
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常に眠気があるため、日常生活に支障をきたすはい ・ いいえ
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会話中や食事中でも眠気があり、突然眠るはい ・ いいえ
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睡眠時に呼吸が止まっていたことを指摘されたことがあるはい ・ いいえ
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いびきが大きかったり、いびきをよくかくはい ・ いいえ
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肥満傾向にあるはい ・ いいえ
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朝起きたときにのどが乾燥していて痛みがあるはい ・ いいえ
1~10まで はいが3つ以上→不眠症の疑い
11~14まで はいが2つ以上→睡眠覚醒リズム障害の疑い
15~18まで はいが2つ以上→過眠症の疑い
19~22まで はいが2つ以上→睡眠呼吸障害の疑い